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新築・リフォームのダイヨシ HSNについて

 
2003/04/26(土) 人情、捨てたものではありません
 今日は、フローリング工事をしていましたが、前日のケガで左手の親指に、バンドエイドだけでは頼りなく、ティッシュを巻きつけセロハンテープで止めていました(包帯の代わり、妻が里帰り中の為)。時間の経過とともに、見苦しい状態となり、「そろそろアカンかな」と思い始めた時、6〜7歳(かな?)の女の子が現場に入ってきました。
  何か迷惑をかけたかなと緊張感が走りましたが、その時の私には意外なことに、その女の子は私に大きなばんそうこうを差し出すのでした。見ると、後ろに若いお母さんが付き添っています。昨日、着工の挨拶でおじゃました近所の奥様でした。
  「まだ、時間が早いから---、これ使って下さい」とのお言葉。前を通る時に目に入ったのだと思いますが、お心遣いが非常にありがたく、とても心温まる思いがしました。最近の人は、ああだこうだと言いますが、まだまだ人情、捨てたものではないと感じました。
  この日は、朝、2人目の子が生まれたこともあり、とても幸せな気分で一日を過ごすことができました。ありがとうございました。
 
2003/05/24(土) 拍子抜け
 昨日23日は、J邸増築工事現場で大工仕事をしておりました。何の 問題も無く、夕方には片付けて帰りました。
  妻が美容院に行くと申しますので、生後一ヶ月に満たない次女の 面倒をみながら留守番をすることになりました。
  天気予報では雨の心配は全く無かったので、ほとんど雨対策をせずに 帰っていました(もちろん、住居部分は大丈夫です。道具や材料の話 です)。ところが、雷がゴロゴロと響いてきまして、テレビでも「奈良県 北部 大雨洪水警報」と伝えています。「また、間の悪いときに---」 と、どうすべきか迷いましたが、赤ちゃんを一人残して現場に走る ことにしました。
  断腸の思いでの決断でしたが、幸いちょうど寝付いたところでした。
約40分後、内心あやまりながら帰ってくると、まだすやすやと眠っていました。「やった!この子は勝負強い!大泣きしてなくてよかった!」
  雨は、数粒落ちてきただけでした(傘もいらんわ)。後で話を聞いた 妻は、絶句していました。
 
2003/07/16(水) 伝えたいこと
 今日、耐震診断でおうかがいしたあるお宅の話です。すでに定年退職をされて10年以上になり、「収入がないから、家の事も全て自分でやっている」という御主人とお話しすることができました。
  まず、シロアリ駆除を毎年ご自身でされるとおっしゃったのですが、私は最初、中途半端なやり方で無駄な努力となっていないかと心配になりました。しかし、驚くことによく勉強されていて、業者のやり方と大差ない方法でされていました。薬もホームセンターの安物でなく、特別に業者の方からわけてもらっていたようでした。
  外壁の塗装も時間をかけて、はしごを何度も掛けなおして、ご自身で塗られたそうです。しかし、この御主人の苦労はこの説明だけではわかりません。なぜならば、この御主人は脳梗塞を患っており、15分しか連続で立っていられないからです。さらりとお話されていますが、非常な困難が伴う作業をされていたのだと思います。
  屋根の話になったときです。私は一瞬、重たい空気を感じたのですが、やはり飛び込み営業の会社で屋根工事をしたらしいのです。「300万近くかかった」とおっしゃるのですが、私の目にはその半分でもまだ高い工事に思えました。「そうですね、少し高いですかね」と答えるのが精一杯でした。
  不自由な体で、大切な家を守る為に、頑張っている古希をすぎた御主人。知ってか知らずか、不当に高い工事をすすめる飛び込み業者。言いたいことが山のようにあり、必死に何かを、社員に・子供に伝えたいのですが上手く言葉にならない。ただ、業者を非難したいだけではない、得体のしれない怒りと哀しみとが交錯し、何かを伝えたいのですが、どうやら私の能力を超えているようです。
 
2003/12/01(月) お客様について
 「お客様は神様です」とは三波春雄さんならずとも、商いを行なう者としては、当然のごとく浮かんでくる言葉ですが、最近はよく「お客様」の定義について考えさせられます。
  と申しますのは、たいていのお客様は良識(常識と同義ではない)もあり、個人的にも安心できる方が多いのですが、時々、極端な方がいらっしゃいます。
@ 相手の利益を全く認めず、ただ値引きの話ばかりする方
A わずかな瑕疵をとても大げさに言い立てる方
B 急ぎでないような案件でも、待ったなしで呼びつける方
等、上記の内容が非常に極端に現れる方がいらっしゃいます。失礼ながら、サラリーマンの方にはわかりにくいかも知れませんが、たとえ職種が異なっても商売をされている方には、よくご理解いただけるのではないかと思います。
  私の定義では、上記のような方は「お客様」とは言い難いのではないかと思います。「何を」とおっしゃる方は、ご自身の職業で同じことをされたらどう感じるか考えてみて下さい。
  私は、お客様の為にも、利益をだしてゆくことは大切だと考えています。現在、毎年のように何か頼んでくださるお客様。「ちょっとのことで悪いねんけど」といいながら、こまめに声を掛けてくださるお客様。「また、あなたにお願いします」と言ってくださるお客様。非常にありがたいお客様に私は恵まれています。
  「でも、うちがつぶれたら、どうやって責任をはたすのか」といったことを考えますと、やはりある一定の利益をあげてゆくことは、お客様に対する一種の義務なのではないか、と考えています。これを「きれいごと」で済ませる人は、世の中に対する見方がまだ幼いのではないでしょうか。
  先週は、リフォーム屋さんの下請けで、@からBまで全て兼ね備えた方のところでお仕事をさせていただき、のみを片手につらつらと、こんなことを考えておりました。
 
2003/12/15(月) 公共工事について
 当社は公共工事の指名願いは出しておりませんので、これまで全く縁のない話でした。ところが、先日、知り合いを通じて公民館建設の仕事を依頼されたのですが、色々と感じたことがあり、今日はそれについて書いてみたいと思います。
  まず疑問を感じたのが、当社が孫請けであるということです。落札業者はA工業、下請業者はB商事(全く施工能力のない完全なペーパー会社)、そして孫請けが大吉建設、もちろん完璧な丸投げ。民間であれば、全く問題はないと思うのですが、税金を使う公共工事がこれで良いのでしょうか。建設業法でも「一括下請負の禁止」(業法23条)という条文があります。もっとも注文者が承諾すればOKなのですが、本来の注文者である県民(市民)はそんなことを承諾しているのでしょうか。
  次に、手続きの煩雑さ。要求される書類の多いこと。本当にこれだけの書類が必要なのか。無駄な提出書類や手続きを減らすだけで、諸経費が削減できるのではないでしょうか。
  これ以上のことは、ここでは書く事ができませんが、もう少し考えなければならない問題が山積していると思います。私も社会人ですから、諸事情があるのはわかります。ゼネコンだけの問題ではなく、金融システムまで話がつながるのもわかります。しかし、太田晴雄氏が「資産疎開」、副島隆彦氏が「預金封鎖」の中で、それぞれ指摘していらっしゃる日本崩壊のシナリオをくずす為には、少々荒療治が必要なようですね。年収が41兆円前後の国が、82兆円の予算を組んでたらあきまへん。

  PS ちなみに今回の話は、条件面からお断りしました。格好良く、
ポリシーで断ったと言えないのが残念。
 
2003/12/23(火) 建物(いえ)を大切にする心
 先日、耐震診断にうかがった際のお話です。そのお宅は玄関からこざっぱりとしており、清掃も行き届いているような印象を受けました。やはり建物を大切にされているお宅の方が、こちらもやりがいが出てくるものです。
  下屋(2階建で1階しかなく、屋根になっている部分)の天井裏で面白いものを発見しました。納戸になっていたのですが、その天井部分に金物で仕掛けがしてあり、網戸が並べられていました。
  私は一瞬とまどいを覚え、「これはどうされたのですか?」と間の抜けた質問をしてしまったのですが、「冬の間は、網戸はきれいに洗ってここにしまっておくようにしています」と丁寧に教えていただきました。私は非常に感銘を受けました。
  確かに、あまり使わない冬の間、網戸をしまっておくと長持ちするでしょう。しかし網戸の値段やその手間を考えると、なかなか出来ることではありません。値段の問題ではなく、その建物(いえ)を大切にする心にうたれました。物のあまった現代の風潮では、笑う人もいるかもしれませんが、私には尊いことに思えました。
  私は、「質実剛健」とか「質素倹約」とかいう言葉が好きです。義理の父にもよく言われますが、古い人間です。このような言葉が死語にならない世の中であってほしいものです。
 
2004/02/10(火) テレビ取材
 先日、某テレビ局から電話があり、「そちらの会社では住宅のリフォームをされているとうかがったのですが---。」
(東京局番やのに、どこで聞いてきてん---。)
「どこか欠陥住宅を知っていれば紹介して欲しいのですが---。」
「特に無いですよ!」と言って話が終わりましたが、実は全く心あたりがない訳ではありません。
  その口調や言い回しにデリカシーが感じられなかったので、大切なお客様をさらし者のようにされたくないと思いました。又、演出したオーバートークもさせられたくないと思いました。
  自分の住んでいる建物を欠陥と認識することはつらいと思います。それを、変に悲観的にせずに客観的に伝え、必要な補修を一緒に考えるのが私の仕事だと思いますが、テレビが介在するとおもちゃにされてしまうような気がします。
  不必要に悲劇的にされる報道は、私の考えに合いません。テレビに出る可能性もありますが、それもゴメンです。私にとっては、現在のお客様との関係を維持していくことの方がよほど大切です。
 
2004/03/11(木) 遅かった相談
 数日前のことですが、なじみのお客様から電話をいただきました。これまで3度ほど工事をさせていただき、ご丁寧にお歳暮まで贈ってくださるありがたいお客様なのですが、「相談したいことがあるんですけど・・・。」となにやら深刻そうな御様子。
  よくよく聞いてみると、すっかり訪問販売の悪徳業者に引っかかっていました。全く必要が無く、意味すら無い工事を高額で押し付けられ、その上、まだ新たな工事をしつこく勧めてくるというのです。「その工事はやった方がいいのでしょうか?」とためらいがちにお尋ねになったので、「誠に申し上げにくいのですが(本当に言いにくい)、そんな工事は必要ないです。それまでにされた工事も必要ないです。そんな会社は相手にしたらダメです。」とお話しさせていただいたのですが、やりきれない怒りが納まりませんでした。
  さらに数日前、こんなことがありました。会社に営業の電話がかかってきて、「訪問販売に弱い(断れない)家庭のリストがあるが、買って欲しい」との内容で、私は一瞬にして怒りが頂点に達しました。「うちはまっとうな商売やさかい、そんなもんはいらん!」と、叩き切ってやりました。
  そのお客様も、「うん、て言うまで帰らんから頼んでしもた」とおっしゃいますが、その態度がいつまでも付きまとわれる原因となります。業者も悪いが、お客様も悪い。なんでもっと早く相談してくれなかったのか、その日は一日、気分がすぐれませんでした。
  PS その工事は必要はありませんが、もし私がしていたら30万円ぐらいのことです。220万円も取られていました。そのお客様は220万円貯めるのにどれだけ働いたのか?どれだけ色々なことを我慢したのか?ということを考えると、もちろん悪徳業者は責められるべき存在ですが、お客様ももう少し考えてください。お願いします。
 
2004/04/20(火) 最近はなかなか大工仕事が出来ません
 私も2年ぐらい前までは、現場でトンカンやっている時間が長かったのですが、最近はめっきり減ってきました。
  これもうれしい悲鳴なのですが、現場が重なるようになってくると、どうしても段取り中心で動くようになりますから、自然とそういう流れが出来てしまいます。
  私は現場で色々な呼ばれ方をします。
    ・大工さん
    ・親方
    ・棟梁
    ・監督さん
    ・社長さん
    ・吉信さん(姓です)
自称 七つの顔を持つ男 (あと一つは内緒)。
  これまでは、「大工さん」と呼んでいただくことが多かったのですが、最近は、「監督さん」「社長さん」が幅をきかせています。個人的に好きなのは「吉信さん」です。職種や肩書きをおいといて、人間対人間の付き合いを感じさせるから。「大工さん」は「社長さん」よりも随分格上です。「大工さん」の方が尊敬の念が強いと思うから。
  思えば、「先生」や「社長」というのは、軽くなったものですね。「先生」で思い出しましたが、先日、某テレビ局から、「先生のところで、紹介していただけるリフォームにまつわる悪徳商法のビデオかテープはありませんか?」ときました。
  「私は先生ではありません。」と返事しておきました。
2004/07/12(月) ホームページ
 今日、耐震診断にうかがったお客様(診断そのものは無料ですが)のところで、一冊のファイルを見せていただきました。
  そのファイルには、当社のホームページの内容をプリントアウトしたものが、ぎっしりとファイルされていました。そして、驚かされたことには、全てのページに黄色のアンダーラインを引いた後があり、非常に熱心に読んでいただいたことが伝わりました。「お勉強の時間」などにとどまらず、「工事現場日記」までアンダーラインが引かれているのを見ると、うれしさと恥ずかしさが同居し、座っていても、どうにも納まりが悪いような、やはり恥ずかしい気分でした。色々とお褒めの言葉もいただき、うれしい気持ちにさせていただけました。
  このような方がいらっしゃって、非常に励みになります。これからも有益な情報を発信し続けたいと思います。

PS この項のプリントアウトを見たらきっと私は赤面することでしょう。
 
2004/09/11(土) 昨日は泣きました、今日は燃えました(1)
 昨日は、夕方に初めてのお客様より、「外壁が落下して断熱材が露出している」旨の電話があり、急いで駆けつけました。よくあることなのですが、ちょっとオーバーな表現なのかな、と考えながら運転していました。
  現場につき、私は言葉を失いました。モルタル壁が落下していました。隣は公園でしたが、幸いにも落下当時は下に人がいませんでした(ベンチの上にモルタル壁が落下していました)。高さ約4m、横幅約5mにわたって、腐食した木部が露わになっていました。いままでにこんなにひどいのは見たことがありませんでした(阪神・淡路大震災の写真では何度も見ていましたが)。柱や梁もボロボロになっていました。直感的に、「この家は建て替えるしかない」と思いました。
  用意してきた、ブルーシートやコンパネで応急手当をしながら、どうしたらいいのか随分考えました。時間がかかったのは、一人で何度もはしごを移動させながらやっていたせいだけではありませんでした。気が付けば、手が止まっていました。
  奥様にお話をうかがうと、「2年前に中古で購入し、まだローンが残っている」との事でした。私は、「建て替えるしか仕方がないように思います」とお話しましたが、奥様のショックを受けた表情を見ると、ただ悲しくなり、「これは運が良かったですよ、無理矢理にでもそう思ってください。下に人がいたら大変でした。もし、運が悪ければ、誰かが亡くなっていたかもしれません。」と言うのが精一杯でした。明日(今日)、御主人も会社を休んで話をすることとなり、何とか、良い方法はないものか悩みました。
  食事中も家族とあまり話さないほど考えました。ふとんの中でも考えましたが、良いアイデアが浮かばず、奥様の心中を思うと自然と心が泣けてきました。
  ※明日、続きを記入します。
 
2004/09/12(日) 昨日は泣きました、今日は燃えました(2)
(昨日は昼食も抜きで、仕事に追われた為、疲労もあり途中でやめました。昨日・今日の表現は変わるとややこしいので、そのまま継続します)

  昨日は、答えが出ないままに眠ったのですが、今朝、目覚めると、ただ考え方だけの問題なのですが、すーっと目の前の霧が晴れていくように、一つのアイデアが浮かびました。
  「これは、喜んでいただける!」と感じ、何とか瀕死の建物を出来る限りの低コストで蘇生させようと、朝から燃えに燃えていました。段取りも、予定を変更し社員2名を同行し、落下物の処理や痛み具合の確認等、作業を進めました。
  わざわざお休みを取っていただいた御主人と奥様と話をし、方針に了解をいただくと、いったん会社に帰り、様々な雑務を消化しつつ(他の現場の段取りや、ご近所の洗面化粧台の補修等)、飲まず食わず休まずで見積書を作成し、夕方には再びお客様のところにうかがいました。
  急いで作ったこともあり、書き忘れた内容があったりもしまして、最終的に合意にいたった金額は少々苦しいものでした。しかし事情が事情で、決して望んでされている工事では無いことは百も承知していますので、気持ちは前向きです。非常に難易度の高い工事でもあり、男を磨くのはこの時、と奮い立っております。
  今年は5月に私のキャリアにとって非常に重要な仕事をこなしました。今月もそのような月になりそうです。こんな年は過去に記憶がありません。
 
2004/12/15(水) おそるべきお客
今月のあたまのことです。はじめてのお客様より、トイレリフォームの見積もり依頼がありました。
  70は過ぎていらっしゃるようなおじいさんでしたが、ものの15分ほどもお話したところで、
「よっしゃ、あんたのことはようわかった。もう何も聞かんでもええ。やって下さい。」とおっしゃり、不覚にもこちらの方が、「本当にいいんですか?」とうろたえた返事になりました。
  まだ金額も伝えてなかったので、だいたいの金額を伝えると、「わかりました」とのご返事。色などの打ち合わせを含み、念のため、翌日に見積書を持ってうかがう約束をしてその日は終わりました。
  翌日、私は真っ青になりそうでした。朝から見積書を作っていたのですが、お客様に伝えていたよりも随分と高くなっています。「何でや」とじっくり考えると、「昨日はあれを忘れていた」とか「これも考えてなかった」といったことが次々と頭に浮かびました。
  「とても、このままでは出せん」と考えた私は、普段、出さないような値段で、見積書を作る決意をしました。
それでも、話していたよりも結構高くなっていたのですが、お叱りをうける覚悟で、持っていくことにしました。
  「すいませんが、お話していたのとちょっと違った金額になりました(ちょっとではない)。」とおそるおそる申し出たところ、「そうでっか、よろしゅう頼みます。それでちゃんとやってくれまんねやろ?」と意に介さぬ様子。
「これは、必死でやらんといかん」と、緊張しました。
  いざ工事が始まると、こぼちをした時点で、床下の傷み具合が相当なもので(これは予期できる範囲を超えていた)、普通であれば、追加費用をいただかないと補修が出来ない程度のものでした。
  しかし、「ちゃんとやってくれまんねやろ」という信頼の言葉と笑顔が、「ここで金の話をしたら男ではない」と私にサービス工事の決意をさせました。気が付けばサービスでの工事は重なり、最終的な利益に大きく影響しましたが、私の気分はさわやかでした。「俺は、たった十数分の会話で俺を信じてくれた人のためにベストを尽くした!」
  さんざん値切られたり、無理なことを言われたりした現場と変わらないぐらいの利益でしたが、実に良い気分で終えることができた現場でした。
  実に「おそるべきお客様」と言えるでしょう。
 
2005/04/09(土) 記念撮影(?)
 おとついは、久しぶりに現場に娘を連れて行きました(幼稚園が春休みで退屈のあまりせがまれた)。上の日向子は慣れたもので、余裕の表情でしたが、下の可南子(もうすぐ2歳)は、道具の音が怖いらしく、いつまでも私から離れませんでした。
  段取りの確認も終わり、そろそろ帰ろうとしたところ、お施主様が「おじちゃん、写真が上手だから記念に撮ってあげよう」とおっしゃて下さり、3人ならんで写真を撮ってくださいました。恐縮しましたが、どことなくほのぼのとして良い気分でした。ありがとうございました。
 
2005/05/18(水) そりゃあ、怖いですよ
 今日は、お客様から雨漏りの応急手当に呼ばれました。いくぶんの段取りの調整をし、何とか駆けつけました。
  屋根に登ってみると、これまでに何度も手直しをした跡があるのですが、瓦も全体に傷みが進行しており、「今回は、葺き替えでないといかんな・・・」と考えながら、一人でブルーシートをかけていました。
  下に降りる頃に、ご主人が帰ってこられて、「やっぱり大工さんは違うな。怖くないの?」とおっしゃいます。
「そりゃあ、怖いですよ。みんな怖いけど、そんなこと言ってられへんし、だんだん慣れてくるんですよ」
  でも正直なところ、私の怖がりは人よりも激しく、高いところの仕事は苦手です。今日も、下屋もなく下までまっさかさまのところで、許されるならやめておきたいのが本音でしたが、雨漏りを心配される奥様の顔を見るとそうもいかず、やっとこさの仕事でした。
  やれやれ、我ながら情けない。
 
2005/06/25(土) お得意様なのですが・・・トホホなお客様
 今日は、あるお得意様と縁を切る決断をしました。この5年間で、11度に及ぶ工事依頼を受け、普通に考えたらありえない話だと思うのですが。
  実は以前より、ずいぶん我慢をしてきました。

@ いつも必ず無理な値切りをし、妥協して値段が決まってから、「ついでにあれも頼む」「これもサービスでやっといて」のオンパレード。
「ついで」の方がハードなのは当たり前。

A 「安かったら何でもいい」とはおっしゃるのですが、フタを開けてみると、「もうちょっと見栄えのいいやつ」

B 「今やったらいてると思って」と言いながら、日曜・早朝・深夜の電話。ひどい時には、大型台風で現場を休んでいる日に、「台風やったらいてると思って・・・。今からこの間の集金にきてくれはる?」
「別にせいてませんから、またあらためて伺いますよ」
「私、はよ払わんと気持ち悪いから、今すぐ来て」
請求書だして、2週間近くほったらかしといて、大型台風で社員・職人を休ませている時にこの電話。

C 見積書を提出して、10日ぐらいは平気でそのままにしておくのに、いざ頼むと、
「明日から来て」「何でこられへんの」「何とかしてよ」
ひどい時には、前日の21時ぐらいに電話してきて、
「じゃあ、明日の朝来てくれはるな?」
うちは、そんなにヒマそうなのか。夜、私が会社の電話に出なくなったのは、この方のおかげです。

D 材料をとって段取りしていても、ちょっと気が変わったら、「あれはもうええわ。やめといて」
まだ、在庫で持ってるちゅうねん。もう処分しよ。今回、また増えたしね。

  まだまだ、あるのですが、そろそろやめておきます。今回は工事依頼を断わりました。何のメリットもないばかりか、振り回されてこちらのペースがおかしくなってしまいます。何よりも、精神衛生上、悪い!
  お客様に対し、こちらから「NO」を出すことは、批判を受けることもあるかと思いますが、うちは時々、発生します。でも、それは他の多くの、優良なるお客様を守るひとつの手立てであるとの認識をもっています。
 
2005/06/30(木) 悪質リフォームについての報道
 私は新聞を4紙とっています。というと、「朝日・毎日・読売・産経か?」と反応する方が多いのですが、私は一般紙を4紙もとるほど酔狂ではありません。ずばり、毎日・スポニチ・日経・奈良の4紙です。一番、時間をかけるのがスポニチ(阪神が負けた翌日はそうでもない)、次に日経、毎日、奈良の順番です。
  日経や奈良ではそうでもないのですが、毎日では連日「悪質リフォーム業者」についての記事が目立ちます。朝日や読売ではどうなのでしょうか?
  日々、記事に接するにつけ感じることは、まず第一に「なぜ、こんなにたくさんの人がだまされるのか?」といった強い疑問です。「お客さんはバカではないから、口だけ上手いこと言うてもあかん。自分の人間を鍛えて、本当にお客さんによかれと心から思ってはじめて信頼される。そうでないと、仕事は取れん!」私は社員に、日頃このように話しているのですが、どうやら事実はそうでもないようです。確かに強引なこともあるのでしょうが、そんなに上手いのかい、と変に感心してしまいます。それぐらい能力が高かったら、もっとまっとうな仕事に精だしたほうがええんとちゃう。悪いこと言わんから。
  要するに、自分が社員に教えている世間観と現実の世間が違うことからくる自分の中での不快感(なかなか、上手く表現できないのですが)があるということ。
  次に、どうせならもっと大々的に取り上げて、社会問題にして欲しい、ということです。「ワン切り」や「(旧)オレオレ詐欺(現 振り込め詐欺)」のように、広く知れ渡ると被害にあう人も少なくなるのでは、と愚考します。
  私から出来るアドバイスは、

  「飛び込み営業は、相手にするな、家に入れるな!」

ということにつきます。もし、何か頼みたいことがあれば、必ずこちらから連絡をとって(電話帳でもホームページでも見て)、来てもらってください。
  ついでにもう一つ、弊社ホームページ「お勉強の時間、業者選択の時間・悪徳商法の時間」でよく勉強してください。
  私も、少しは世間様に貢献しようと、今後もこの問題は触れるつもりです。
 
2005/07/04(月) 私もわかりませんでした
 前回の日記で、「なぜ、こんなにも騙される人が多いのか?」といった疑問を書いておりましたが、実は私も同類でした。
  新聞報道で、「サムニングループ」や「エム・エイチ・エス インターナショナル(以下 MHS)」といった社名を聞いて、はてどこかで聞いたような、とは思っていましたが、実はきれいに忘れていただけで、当社にも接触がありました。
  「サムニンJAPAN」の施工管理課長及び「MHS」の工事管理室室長の肩書きを持つAという男が当社にやってきたのは、4年前の夏でした。事前に電話でアポイントをとるなど、営業マン嫌いの私にも不快さを感じさせないさわやかな訪問でした。40半ばのいかにも真面目に世渡りをしてきました、と顔に書いてあるような実直そうな男で、私はすぐに好感を持ちました。
  用件は、「当社は営業会社なので、工事を下請けでやって欲しい」とのことでした。話す内容も理路整然としており、「この人の仕事ならしてもいいかな」と思いました。
  しかし、結局は縁がありませんでした。なぜかはわかりませんが、先方は「いい人に会えてよかった」と言いながら、二度と連絡をしてきませんでした。何かあったのかな、などと好意的には受け止めていたのですが、こちらも下請けにはそれほど執着もなく、それっきりの関係で終わりました。
  その男は、どうやら社長の右腕のような男らしい、と話の節々で想像がつきました。わたしには、あの夏の日に膝を突き合わせて話した男が、こんなに卑劣でつまらない仕事をするとは信じられない思いです。彼は知らなかったのではないか、などと甘いことを考えたくもなるのですが、でもそれはあり得ないでしょう。社長の右腕であれば。
  「人間とは、かくも難しいものか」ともうすぐ不惑の私も戸惑うばかりなのです。

PS 当時は、私も不勉強でよくわからなかったのですが、その時「中心だ」と言っていた屋根裏や床下の金物補強は、真面目な業者なら絶対にやらない工事です。現在の私なら、その男とどのような会話をしたのだろうか。
 
2005/08/25(木) お客様との会話
 今日はお客様のところで長話になりました。もう、今回で5度目の依頼となるお得意様です。仕事の話はあっという間に終わったのですが、その後、延々と政治・経済の話となり、2時間以上会話をしておりました。
  歯科で開業されており、御歳は私の父親ほどなのですが、恐縮することに非常に丁寧な物腰でお話下さいます。業種や年齢こそ違え、同じ経営者ですので、自然と経営の話になりますが、非常に感銘を受けた話がありました。
  この歯科医院では、治療後2年以内の不具合は無償でやり直されているそうです。う〜ん、個人的な体験で言うと治療結果に責任を持つ医院というのは記憶にないですねえ。「いや、そんなことないで」とおっしゃる方、私の医療体験など微々たるものですから、そう目くじらをたてないでください(笑)。
  患者さんの動向についてですが、久しぶりの患者さんは、他の歯科医院をはしごされて、また帰ってきているパターンが多いそうです。「いい仕事をしていたら、必ず患者は帰ってきます」と繰り返し強調されていました。ことさら「治療」と言わずに「仕事」と表現されていたことも印象に残りました。
  業種は違っても商売の基本は同じだなと、改めて再認識させていただきました。新規顧客の開拓よりもリピートに力を入れる姿勢も共通しており、うんうん、うなづきながら聞かせていただきました。またこの方は、経営上もっとも難しい後継問題を見事にクリアされていらっしゃるので、私にとって目標でもあります。

  かくいう当社も、「手直し」は毎月のように発生しますが、責任を持ちやり直しております(と申し上げると、そんなに多いのかと言われそうですが、10件に1件以下だと思いますよ。これは余談ですが、そういうめぐり合わせになるのか、同じお客様で発生しやすいものです)。
  今月は月初にも、あるお客様と長話をさせていただいたのですが、さりげない会話の中に含蓄に富んだ内容があり、感銘を受けました。いいお客様に恵まれるということは、お金には代えられないことですね。
 
2005/10/03(月) 業者を育てる
 最近、これまで基礎工事やその他土木工事をお願いしていた業者と縁を切ることにしました。値段もそこそこで仕事も悪くないので良かったのですが、段取りが悪いのが玉にきずで、自分から言い出した工期が守れません。また、無断で現場をあけるなどの行為も目立ち、やむを得ず決断しました。
  他にも付き合いのある土木業者はいるのですが、仕事内容やその他、納得しかねるところもあり、あまり頼む気にはなりません。
  そこで、外構工事でお気に入りの職人がいるのですが、鉄筋やコンクリートの扱いは慣れているのですが、「基礎はやったことがない」と言います。いい仕事をするのはわかっているので、私も腹を決め、「一緒にやって段取りは教えたるからやってみいへんか?」と打診していました。
  その職人もその気になり、「教えてくれはるのなら」とやることになりました。私は大工ですが、何でも挑戦するたちで、昔はちょっとした基礎工事は自分でやっていました。
  しかし、さすがに勘がいいので一つ言えば十を知るようなあんばいで、あまり手がかかりません。木で型枠のパネルを作るところは、私がやりましたが、総じて自力で出来ました。
  少々、気に入らないところがあっても、経験のある者にまかせておけば楽は楽なのですが、私は手の良い職人を自前で育てながらやってゆく方が、気分も良いし結果的に良い現場を作りやすいように思います。今回も、おかげでまた一つ「勝利の方程式(私はこの言葉が好きです)」が出来上がりました。彼にとってのスキルアップは当社にとってもスキルアップになります。
 
2005/11/22(火) 構造計算書偽造事件
 大変な問題が起こった。マンション建設などは我々から見ると対岸の火事のようだが、広い意味で同じ建設業界だ。シックハウス問題から悪質リフォーム業者問題、さらにアスベスト問題と難問山積のこの業界は、またしても大きな不信の種をまいてしまった。
  はっきり言って寝耳に水の事件であり、にわかに信じがたいほどだ。しかし、これがこれっきりで終わるのか、氷山の一角で次々に明るみにでるのか、正直なところ恐ろしい。
  もし同様の事件が連鎖で発覚すれば、最終的には公的資金の投入しか手段がなくなるだろう。今でもそれしかないと思うが・・・。そのとき財源はどうするのか?その問題に取り組むとき、本当にことの大きさがわかるのではないか。
  しかし、連日の報道を見る限り内容が薄っぺらい。右も左もわからん知識人にコメントさせず、実務者を連れてきたらどうかと思うのだが。
  簡単に内容にふれると、まずたいていの設計事務所が構造計算など出来ないことがわかっていない。まして施工業者などにそれを見てわかることを求めるのは、小学生に三角関数の計算を求めるようなものだ。
  次に計算式などが理解できなくとも、経験則でわかるだろうという意見もあるが、これはある意味で当たっている。しかし、常に許容範囲ギリギリで建築しているわけではないので、普段より少し簡単かと感じても「これでもいけるんやろう」と思うのが大半ではないか。また、少しぐらい疑問に感じても、図面通りの施工を工期を守って終えることを強く求められている下請施工会社のそれも末端の人間が、誰にどうやって疑問をぶつけ再計算を求めるのか。テレビでされている議論は現実ばなれしている。
  この事件でどうしても明らかにしないといけないのは、姉歯のおっさんの元請設計事務所、販売元不動産会社、建設会社の間で暗黙の合意があったかどうかだ。状況としては合意があってもおかしくなさそうだが、もしそうであればこの業界は冬の時代がつづく。
  それにしてもあの男の精神構造は一体どうなっているのか。まるで他人事だが、怒りやあきれを通り越して不思議さを感じたのは私だけではないだろう。色々と言い分はあるだろうが、姉歯のおっさんはその罪、万死に値する。
 
2005/12/03(土) 構造計算書偽造事件(2)
 この数日は人に会うたびに、この事件について見解を求められる。今日はこれまで質問に答えてきたことをまとめてみよう。

Q 同業者として感想はどうか?

A 正直なところ、驚きだ。まさかこんなことがあるとは、業界内の者としても信じられない。

Q これは特殊な例か?または氷山の一角か?

A 建設業というくくりは同じだが、マンション建設と我々のような零細な工務店とは接点がないので、内情には暗い。特殊な例だとは信じたいが、連日の報道の変遷を見ているとそうとも言えないようだ。今後、発覚が増えていく可能性はある。

Q これは建設業の体質か?

A 「NO」と言いたいところだが、はっきりと否定できない。まわりのリフォーム会社でも程度は違うが、安くするために必要な工程をとばしている会社は多い。
  しかし、これは建設業のみならず日本中の風潮ではないか。私が子供のころ、日本人は「エコノミックアニマル」などと世界から言われていたが、まさに地でいってる感じだ。
  みな忘れているかも知れないが、メンテナンスを軽視して大量の食中毒を出し、多くの販売店を泣かせた乳業会社。必要なリコールを隠し続け、青息吐息の自動車メーカー。狂牛病の騒ぎにつけこみ、自社のミスによるロスまで行政に買い取りさせた食肉業者。鳥インフルエンザの感染に気付きながら販売を続け、自殺までしなければならなかった養鶏業者。利益のために運行ダイヤをつめ、大事故を引き起こした鉄道会社。整備不良でも飛ぶことしか頭にない航空会社。本当に困った人に保険金を支払わない生保会社。
  この数年でどれだけの起業不祥事が明るみにでたか、いちいち覚えていられないほどだ。建設業の体質かと問われると、日本全体の問題だと思う。

Q 仕事に悪い影響がでないか?
(これは本当によく聞かれる)

A 私はかえって当社には追い風かと考えている。当社は安売り競争に参加せず、適正価格で優良な工事を提供したいと考えている。安さに走ろうとすると無理がでる、説明しやすい例になるのではないか。
  骨材を入れない防水工事や下地が悪いのに無理に貼るクロス工事。安売りリフォームも姉歯のおっさんと同じだ。被害の金額が違うだけ。

  まだまだ書きたいことはあるが、あまり長くなるので今日はこのあたりにしておく。
  しかし、私が被害者であればと思うと怒りを禁じえない。理屈に合わないかも知れないが、関係者に弁済能力が無い以上、公的資金の出動で救ってあげるしかないだろう。被害者はたとえ経済的に保証されても、その精神的苦痛は甚大だと思う。せめて、お金だけでも何とかしてあげたらと切に願う次第だ。
  だが私には懸念材料がある。阪神淡路大震災の被害に遭った人たちも、画期的な救済はなく二重ローンを支払っている人も多いと聞く。その他、多くの天災も同様のようだ。今回は行政の責任が論点になるか。
 
2005/12/12(月) 世の中をなめている
 今日もおかしな電話があった。いま何をしているのかは聞いていないが、これから耐震リフォームをやりたいらしい。電話の意図がよくわからなかったのだが、しばらく聞いてみた。数分後、おどろくほど幼稚なことを考えていることがわかった。

「最近、悪質リフォームでつかまっている人間も多いし、あんな風になりたくないのでいいやり方を教えて欲しい。ホームページを見てて、ここやったらしっかりしてると思ったから」

あほらしく、しばし無言。
(そんなもん、普通にやっとったらええんじゃい・・・)

会話が少しすすみ、
「補強は金物だけでいいんですか?」
「いえ、それは耐震補強の一部で壁補強とか基礎補強とか色々ありますよ」
(うちは学校とちゃうで・・・)

「それは感覚で決めるんですか?」
「もちろん基準があって判断します」
(おいおい、当たり前やろうが)

「それを電話で教えてもらえないですか?」
ここは毅然と
「それは時間をかけて勉強していただかないとダメですね。お医者さんに向かって、電話で医者になるやり方を教えてくれと聞いても医者にはなれないでしょう。電話ですぐに教えられるほど簡単な仕事だと思いますか?」

  耐震技術認定者の試験は、大工経験7年・二級建築士のうちのジュンでも10月に落ちている(ゴメン、ばらした)。一体、電話で何を教えるのか?
  これはどんな仕事にかかわらず同じだと思うが、いやしくも一個の職業として成り立つもので、そんなに簡単に教えられるものがあるはずがない。知識がどうこう以前の問題で、世の中をなめているとしか言いようがない。縁があって少しばかりの会話をしたが、何をされても上手くはいかないと思うのだが・・・。
 
2005/12/16(金) 大難戦(1)
 かつて経験の無い非常に苦しい戦いから一夜明けた。現場単位で言えばもっと苦しい現場はあったが、一日単位で言うと昨日は今までで一番苦しかった。

5:30 普段通り目覚めるが、軽い頭痛を感じる。私は5年前に工事の騒音で右の耳を難聴と耳鳴りに追いやっている。その影響で時々気分が悪い。この日の第一印象は「いややな」。

8:30 きっしゃんにこの日予定されているシステムバスの現場の諸注意を与えて、送り出す。少し立ち会うだけの予定だ。

8:50 以前にも書いたと思うが、私は幼稚園の父兄会で役員をやっている。この日はクリスマス会で私はサンタクロースに変身し、子供たちにプレゼントを配る役目をおおせつかっていた。予定通り幼稚園に向かった。

9:31 サンタさんと化した私はコーヒーをよばれ一服していた。この時、アクシデントの第一報が入った。メーカーの営業担当からだ。二階でシステムバスを組む予定だが、階段が狭く搬入できないと言う。

私 「現場確認してもらった時、いけるってゆうたやろ。ショールームでも廻り階段をあげて組めるやつって頼んでたのに」
岡(メーカー営業担当) 
   「何とかいけると思ったんですけど、現場から職人が無理やって言ってるんです」
私 「何か方法は無いのか?」
岡 「モノを替えないとダメらしいです」
私 「わかった。俺はもうすぐ連絡とれんようになる。お昼前にはいけると思うから、対応の方法を考えておいてくれへんか?」

  ここのお施主様は奥様が足が悪く、お風呂に入れてあげるのも二人がかりだそうだ。そのために広いお風呂にリフォームする。だから銭湯などにいくことは出来ない。間違っても、発注をかけ直していたずらに工期を延ばすことなど出来ない。ご主人は「信用しております」と言って、仕事の話などはほとんどせず、世間話だけでまかせてくれた。この現場だけはしくじることが許されない。私の男がかかっている。

9:43 きっしゃんから第二報が入る。
きっしゃん 
   「大変なことになってるんです」
私 「うん、聞いた。階段のそで壁をとってもあかんのか?」
きっしゃん 
   「無理らしいです」
私 「営業担当がそっちへ向かってもう一回考える。きっしゃんは離れんと現場におってくれ」

  直後にお呼びがかかり、おじいさんの声色でしばらくサンタさんに没頭する。私はよほど頭が器用なのか、現場のことはすっかり忘れて楽しんだ。

10:45 会社に帰り、すぐに着替え現場に向かう。
11:00 現場につくやいなや、メーカーの職人に確認する。

私 「何か方法は無いのか?」
朝倉(メーカー施工チームの親方)
   「お風呂のサッシをはずしたらいけます」
  すぐに二階にかけあがり、サッシの様子を見る。一瞬で腹が決まった。
私 「よし、これをはずす。はずしたらいけるねんな」
朝倉「スペースはいけますけど、もって上がれるのかどうか」

  私が本気なのかと、とまどっている。ここは敷地も高くなっていて、二階とはいえ実質は2.5階になっている。もちろん足場もない。

私 「入るんやったら何とかする。すぐに段取りして全員集合させる。」

  私はすぐにきっしゃんを倉庫に走らせ、ダンプで足場の用意を持ってくるよう指示を出し、レイを他の現場から引き抜いて合流させた。二人には「昼飯は悪いけど遅らせてくれ」と伝え、ジュンは12:00からお客様への引渡し、その後カレンダー配りの予定だったが、「いまのうちに飯食うといて、終わったらすぐにこっちへ来てくれ」と、戦闘配置が終わった。
  しかし、敵はなかなか強力で、ここから予想以上の苦戦をしいられた。お風呂のサッシは大きな出窓でしかも鉄製だったのだ。
  「出窓はアルミでも重いのに・・・」私は何気なくつぶやいたが、このつぶやきは後の苦戦を暗示していた。

  (2)に続く
 
2005/12/16(金) 大難戦(2)
 社員全員に指示をだした後、私は次の段取りをしたり不測の事態に備えたりした。モルタル補修の段取りや、もし間違ってサッシを使えなくしたら代わりがすぐにあるのか、サッシ屋にうもれている在庫を確認したりしていた。
  そして足場の組み方も考え終わり、頭の準備は出来たのだが、まだ足場丸太が来ない。どうせ今日中にシステムバスが組み終わらないのは百も承知だが、展開によっては一日の遅れも出さずにいける可能性が残っているので、ついイライラして電話してしまう。「いまどこや?」。この間は1分が1時間にも感じられた。

12:25 ようやく足場丸太が到着して組み始めると、すぐにジュンも到着。一緒に組むのは初めてだが、こういうのは私よりジュンの方が上手い。

13:00 私はてっきりサッシの耳をモルタルで巻いていると思っていたのだが、ジュンが確認すると内付けでコーキングを切れば取れるという。ジュンとレイが二人でコーキングの撤去作業に入るのだがなかなか進まない。

  サッシが落ちないようにしばったロープを持ちながら待つのだが、この間がまた長い。しかし、こんな時に急いでもろくなことはないので、「ゆっくりやれよ、あわてるなよ」と何度も声をかけた。「ゆっくりやれよ」と言いながら、おそらく私が一番ジリジリしていただろう。早くおさめて安心したかった。

13:20 コーキングの撤去が終わり、いよいよサッシをはずしにかかる。ジュンとレイが足場で構え、私ときっしゃんがロープを持っている。岡さん、朝倉さん、村山さん(メーカー職人)が中から出窓本体を持つ。

村山  「無茶苦茶重い!」
ジュン 「こんなんもたれへん!」

  下まで下ろすのはあきらめて、何とか足場までおろすことにした。私はジュンとレイにスライダーまで降りて待つように言うが、そのポジションではやりにくいらしく、足場で一緒に持とうとする。しかし、危険だ。それでは「GO」が出せない。

私  (重たいから、はずれたひょうしにガクンといったら危ないな・・・)
村山 「ガクンといったら一緒に行ってまうで」
ジュン「いくでしょうね」
  そのやりとりで、意思が決まった。
私  「二人とも下まで降りとけ」
ジュン「でも持てないでしょう」降りようとしない。
私  「絶対に落とさんと持っとくから降りろ、早く」
とせきたてて降ろす。万一、二人にケガをさせたら奥さんに合わせる顔がない。この場合、一番大事なのは社員の安全だ。結局、中から7人がかりでささえ、何とか足場まで降ろす。しかし、サッシが大きく開口部分とかぶっており、システムバスの架台を入れるには邪魔なようだ。

朝倉 「これ、水平ぐらいにせんと入らへんからアカンのとちゃうか。サッシと同じぐらい重たいで」
 
  みんな言葉を無くした。たしかに1620(1.5坪)タイプでセパレートされていないのでかなり大きい。

ジュン「これだけおったらいけるでしょう」
私  「よし、やってみよう」

  架台をロープでしばり、上げ始める。「せえのーっ、せえのーっ」きっしゃんが声を掛け、みんな力を合わせる。何とか上まできたが、やはりサッシが邪魔でどうしても引き込めない。

私  「しゃあない、もう一回降ろして、しんどくてもサッシを下まで降ろそう」
ジュン「下まで行かんでも、もう一つ下の段の足場でもいけますよ」
私  「そうやな、その方がええな」

  重い、動かない。しばり方を変えて、大勢でロープを引っ張れるようにした。

ジュン「さあ、いきましょうか」
私  「ちょっと待て、下に誰もおらへんか、きっしゃん行って人が近づかんように見といてくれ」

  全員、二階にいるので下の様子がわからない。レイが下のほうを覗きこんだ。
レイ 「犬がいます」
私  「そうか、丁重に下がっていただいてくれ」

  降ろし始めるが、これもひと仕事だ。「そっちを緩めろ」「ちょっと待って」など、怒号が飛び交う。ようやく下の段に降ろして、足場にくくりつける。再び、架台をしばり、上げ始める。「せえのーっ、せえのーっ」きっしゃんの声が響く。上から5人、スライダーから2人で息を合わせる。今度は架台を無事に取り込むことが出来た。みんな軽い放心状態だ。

私  「よし、次はサッシや!もう一回あげるぞ」

  まだ、糸を切ってはいけない。ジュンとレイが足場に降りてしばり始めるが、今度はそのままはめないといけないので同じしばり方ではダメだ。
私  「最初のくくり方にせんと、はめこまれへんからアカンぞー」
  二人はやり直すが、きっしゃんが手直しした。
きっしゃん
    「それやったら、引っ張られへんで」
  きっしゃんは日頃は寡黙だが、口を開くとポイントをついたことを言う。私は気付かずに見ていた。
私  「くくるのも難しいな」
レイ 「難しいですね」

  三度(みたび)、きっしゃんの掛け声で始まる。「せえのーっ、せえのーっ」今度はなかなか上がらない。気が付けばメーカー組がほっとしたのか後ろで見ていた。3人はすぐに気付き、7人ががりになって上がるようになった。サッシは無事にビス止めされ、ようやく落ち着いた。もう15:42になっていた。

  それからコーキングと防水テープを取りに行き、補修も終わり、足場をばらすことが出来た。結果的に工程に一日の遅れを生じさせたが、一時は最悪のことまで覚悟をしていたので、これで済んだのは不幸中の幸いだった。
  みんな、よく頑張ってくれた。かえすがえすも私は良い社員に恵まれて助かっている。私も4年前までは一人でやっていた。浴室の解体など一人でしんどい仕事は、父親に手伝ってもらっていた。もし、これがその頃に起こっていれば、こうは迅速に対応できなかっただろう。帰りの車では、自然と手を合わせるような気持ちだった。みんなよく頑張ったが、あえて言うならばMVPはジュンだった。