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大工、艱難辛苦の時代

先日、必要があり古い書類を整理していた。10年前に私が書いた請求書が出てきた。当時はパソコンも使用していない。手書きの請求書が懐かしく、目を奪われた。
当時はいわゆる「一人親方」で、色々な会社の下請けをしていた。その請求書の中に、大阪の工務店に出した新築の手間請けのものがあった。手間請けとは、材料を持たず、坪いくらで大工仕事だけをする形態の請負だ。

金額を見て感嘆した。現在、当社が支払っている金額よりも2割以上高い。あのTホームの単価のほぼ2倍にあたる。当時はもっと仕事も簡単だった(ホールダウンを筆頭に金物が少なかった)し、奈良よりも単価に厳しい大阪の建て売りでも、こんな金額がでていた。

世間ではこの数年、賃金が下がりつづけてきたが、昨年あたりから一部上場企業の中でベアの流れがでてきたらしい。しかし、大工の手間ほどたたかれて、しかも回復の兆しが見えない職業は少ないのではないか。
当社では、現在でも日当2万円を維持しているが、全国平均では1万7千円ほどになる。大手ハウスメーカーでは、日当1万2千円とも聞くし、大阪では1万円のところもあるという。ちなみに昔は2万5千円というところも多かった。

ここで一つ断っておきたいのは、大工にはボーナスも無いし、正月や盆は手取りが少なくなり、雨が降っても収入が無い。おまけに車や道具は自分持ちで、まともな大工なら車を盗まれたら、車よりも積んでいる道具の方がずっと高い。
大工の2万円は決して高くない。一人前になるまでにかかる時間、自分でそろえないといけない道具、どれをとってもクロス職人や塗装職人など、その他の職人(失礼、悪意は無い)とは、少し違うのである。
現在では職人の尊厳なんぞ、どこかに置き去りになり、大工を安く使いたい会社ばかりになってしまっている。

私は「良い大工」「ドラフト1位の大工」を私の現場で使いたい。「余りものの大工」を安くたたいて使うようなマネはしたくない。
更にいうと、結局その方がお客様のためになる。誰がなんと言っても建築工事の主役は大工だ。ちょっとしたリフォームでもしかりである。その主役を値段で決めるようになると、工事も「値段なり」になる。補足すると、「手のいい大工」は日当の安い会社には行かない。他に仕事があるからだ。

10年前、自分がもらっていた単価を大工に支払うことが出来るか?この問いは重い。私にはまだ、それだけの力が無い。1枚の請求書に、色々と考えさせられた。

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こんにちは、吉信秀樹です。
森進一は、初期の対応を誤りましたね。いい歳をして・・・と思うのですが、偉くなると頭を下げにくくなるのでしょうか。私は偉くないので、毎日、妻に謝っています(苦笑)。
では、またお会いしましょう!

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