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おそるべきお客

今月のあたまのことです。はじめてのお客様より、トイレリフォームの見積もり依頼がありました。

70は過ぎていらっしゃるようなおじいさんでしたが、ものの15分ほどもお話したところで、

「よっしゃ、あんたのことはようわかった。もう何も聞かんでもええ。やって下さい。」とおっしゃり、不覚にもこちらの方が、「本当にいいんですか?」とうろたえた返事になりました。

まだ金額も伝えてなかったので、だいたいの金額を伝えると、「わかりました」とのご返事。色などの打ち合わせを含み、念のため、翌日に見積書を持ってうかがう約束をしてその日は終わりました。

翌日、私は真っ青になりそうでした。朝から見積書を作っていたのですが、お客様に伝えていたよりも随分と高くなっています。「何でや」とじっくり考えると、「昨日はあれを忘れていた」とか「これも考えてなかった」といったことが次々と頭に浮かびました。

「とても、このままでは出せん」と考えた私は、普段、出さないような値段で、見積書を作る決意をしました。

それでも、話していたよりも結構高くなっていたのですが、お叱りをうける覚悟で、持っていくことにしました。

「すいませんが、お話していたのとちょっと違った金額になりました(ちょっとではない)。」とおそるおそる申し出たところ、「そうでっか、よろしゅう頼みます。それでちゃんとやってくれまんねやろ?」と意に介さぬ様子。

「これは、必死でやらんといかん」と、緊張しました。

いざ工事が始まると、こぼちをした時点で、床下の傷み具合が相当なもので(これは予期できる範囲を超えていた)、普通であれば、追加費用をいただかないと補修が出来ない程度のものでした。

しかし、「ちゃんとやってくれまんねやろ」という信頼の言葉と笑顔が、「ここで金の話をしたら男ではない」と私にサービス工事の決意をさせました。気が付けばサービスでの工事は重なり、最終的な利益に大きく影響しましたが、私の気分はさわやかでした。「俺は、たった十数分の会話で俺を信じてくれた人のためにベストを尽くした!」

さんざん値切られたり、無理なことを言われたりした現場と変わらないぐらいの利益でしたが、実に良い気分で終えることができた現場でした。

実に「おそるべきお客様」と言えるでしょう。

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