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2021.05.13

光と風の設計

 みなさん、いい家ってどんな家だと思いますか?いい家の定義はいっぱいあると思います。色々と思い付かれることと思います。そしてそれは全て間違ってはいないと思います。でも、私はどんなにカッコいい家であっても高級なシステムキッチンなど、すばらしい設備を誇っても、光と風がしっかりと考えられていない家は「いい家」だとは言いたくありません。

 光と風はどんなに使ってもただ(無料)なんです!冬にさす南からの太陽光や家の中を吹き抜けるそよ風など、人が暮らす家にとって最大の恵みです。それにもかかわらず、残念ながら光と風が全く考えられていないと感じる家もよく目にします。

 それは政治と一緒でお客様も悪いと思います。価格や住宅設備、耐震、断熱などをお聞きになる方は多いのですが、設計について、それも光と風についてお尋ねになる方はめったにいらっしゃいません。「光と風についてはどのようにお考えですか?」とぜひ聞いていただきたいと思います。  

「もちろん、ちゃんと計算していますよ!」と言われてもそれが建築基準法によるルールについてであれば、あまり意味がありません。例えば建築基準法では居室の採光について必要な開口面積は床面積の1/7以上と決まっています。これは簡単に言うと7畳の部屋であれば1畳分の窓があればギリギリOKということになります。そこには方角は考えられていません。実際の採光は方角が命なのにそれが忘れられているのが建築基準法の限界です。

 簡単に言うと光の設計とは夏の日差しをできるだけカットし、冬の陽射しを最大限取り入れることです。高断熱住宅でこれができると、パッシブデザインの基本形と言ってもいいかと思います。 

 まず、単純に道路や隣地に正対して計画するのはあまりにも容易です。もちろん結果としてそうなることを否定しているわけではありません。それがベストな方角かもしれないし、敷地が狭くてそうしか建てようがないかもしれないからです。敷地の北側に建物を寄せるのはセオリーですが、それだけなら、まだ考えているとは言いにくいかと思います

 南は冬でも陽が射すのでありがたい方角です。東も朝日が差す方向ですから、普通は南向きにリビングなどいい部屋を配置して、その中で東が活きるように考えます。でも、この考え方で冬でも一日を通じて一番陽が当たるのは真南ではなくて、真南から西に22度ほどふった角度になります。敷地の広さや形に余裕があれば、このような配置をすると南や東を考えた設計がより活きてきます。このように考えると先ほどの、単純に道路や隣地に平行に建てるのがいかに安易であるかおわかりいただけるかと思います。

 

よく知られていることですが、夏と冬では太陽の角度が違います。夏の日と比較して冬の日は浅い角度で入ってきますから、夏の日差しはカットして冬の陽射しは取り入れられる、その絶妙なところで軒の高さや出幅を調整するのです。窓に庇をつける時は庇の出幅と窓との距離で調整します。

 そしてCADで日当たりシミュレーションを行って、冬至の日当たりを確認します。この時に「窓の高さをもう少し上げるともっと奥まで日が当たる」とか「もう一回り大きな窓にするとこれぐらい明るくなる」とか、お施主様と設計士で打ち合わせをしながら決定していくわけです。これが光の設計です。

 

 これは風配図と言って奈良気象台の情報です。青い線が風の吹いてくる方向を示しています。中心の点から離れていればいるほどその方角から風が吹くことが多いという意味です。奈良では一年を通じて南北の風が吹き、東西にはあまり風が吹かないことがわかります。つまり、奈良では南北の風が抜けやすい間取りを作ると、風通しのいい家ができるのです

 また風は対面する窓に高低差があると通りがよくなります。特に入ってくるほうの窓が低い位置にあり、抜けていくほうの窓が高いところにある時に風の通りがよくなります。ですから和室の地窓は畳の上に寝転がっている時に気持ちのいい風を感じるだけでなく、部屋全体の風の流れがよくなります。

 窓の形も風の取り込みに大きな影響があります。東西の窓に縦すべり出し窓と言いますが、ドアのように開く窓を使うと南北の風が取り込みやすくなります。こういった窓はデザイン以上に風の設計を考えて使うところに意味があります。

 光と風の設計を考える時、吹抜をもうけるのはおすすめです。それもリビングの南東に配置できると最高です。吹抜が南東にあると、朝日が奥まで差し込んで気持ちのいい朝になりますし、高断熱高気密で建てていれば、冬でもそれだけでリビングがかなり暖かくなります。さっきも申しましたがパッシブデザインの基本形です。

 吹抜は風にもプラスです。風の通りに高低差は重要な要素ですから、リビングに吹抜があると家全体の風の通りがよくなります。ちなみに、玄関の吹抜は私はおすすめはいたしません。確かにカッコはいいのですが、カッコいいだけであまりメリットはありません。それは方角を選べないからです。むしろ、玄関を風除室として使えなくなるなど、かえってデメリットがあります。冬場に玄関先で用が済む来客などがあると一気に家全体を冷やしてしまいます。

 いい家って、やっぱり光と風がしっかりと計算されている家だと思うのです。

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